ソニー・インタラクティブ
エンタテインメント ジャパンアジア(SIEJA)

ソニー・インタラクティブエンタテインメント ジャパンアジア(SIEJA)

ソフトウェアビジネス部 次長
SIEJA 制作技術責任者
秋山 賢成 氏

ソニー・インタラクティブエンタテインメントにて、ゲーム・コンテンツ制作コンサルティング及び技術サポートに従事。多数の著名ゲームタイトルの制作に関わり、現在に至る。日本・アジアエリアにおいて、PlayStation®4 及び PlayStation®VR の技術講演を実施し、技術デモの制作・ディレクションなども行っている。

PS VR発売から半年、得られた手応えとは

PlayStation VRの(以下、PS VR)発売開始から半年が経って、どのような手応えを感じられていますか?

秋山 幸いなことに、大変ご好評を頂いていて、品切れが続いており申し訳ないのですが、ただそれだけ需要がある、ニーズがあって期待もいただいている、というところで手応えも感じており、ユーザーの皆さんやコンテンツを開発されている皆さんには大変感謝しています。
コンテンツ数もローンチで30本ほど、現時点ではグローバルで100コンテンツ以上が集まっていますし、今期もどんどん出てくる予定があります。開発中のコンテンツの量においてもかなり手応えを感じている、そういう状況です。

2017年におけるPS VRの大きな目標はどのようなものなのでしょうか。

秋山 もちろんセールスはとても重要なので、スマッシュヒットするタイトルがどんどん出てくることは期待しています。ただ、VRは長い歴史はあるものの、消費者向けとして生まれて間もない。その中でもPS VRは非常に若い商品なので、これからコンテンツが成熟していくタイミングだと思っているんです。ですから、現状のコンテンツは「驚き」だとか、「わっすごいよね」っていう体験、すなわち一瞬の体験を大事にして遊んでいただいているんですが、今年またたくさんのコンテンツが出てくる中で、驚きだけではなくて、継続される楽しさ、そういったものが生まれてくることを期待しています。
このあたりは、スマホと同じことかなと思っていて……スマホも初期はミニアプリみたいなものがたくさんありましたよね。ピアノを弾いたり、加速度センサーを使ったり。ああいった、いわゆる一発ネタ的なものから、いまのスマホゲームみたいに進化しているのと同じように、そういった素晴らしいコンテンツがこれからどんどん生まれてくるんだろうなと期待しています。

中国から生み出されるハイクオリティなVRコンテンツ

2017年4月現在で、PS VRのコンテンツは世界中で開発されています。国ごとの傾向はどのようになっているのでしょうか。

秋山: 世界的にUnityをはじめ、ゲームエンジンを使用して作られているものが非常に多いです。特に海外が顕著で、アジアのコンテンツでもUnityで作られているものはたくさんあります。その中でも、中国発のコンテンツが非常に多いです。

中国のVRコンテンツにはどのようなジャンルが多いのでしょうか?

秋山 アクション、シューター系のVRコンテンツがメインになっていまして、クオリティもかなり高いです。例えば、去年の「Unite 2016 SHANGHAI」で公開された『Ace Banana』は非常にクオリティが高いですね。

中国のデベロッパーは、もともとコンソール機での開発をされていた方たちですか? それとも、PCゲームやスマートフォンなどの開発から?

秋山 PCゲームを作っている会社さんがPlayStationに参入されて、マルチプラットフォームで展開する形が多いです。

そういったケースは世界的に増えているのでしょうか。

秋山 はい。これまでPlayStationでは作っていなかったけれど、VRコンテンツをPCやスマートフォン向けに作っていた方って結構いらっしゃるんです。幸いなことに、PS VRをきっかけにして、PlayStationへタイトルをリリースしてくださるデベロッパーさんが増えています。

PlayStationとVRの親和性

開発者向けのサポートをされている中で、一番多い問い合わせはどのようなものでしょうか。

秋山 ジェネラルな問い合わせで一番多いのは、「酔いの対処をどこまでやればいいのか」、もしくは、「もう自分たちは慣れてしまっているので、酔わなくなってしまったが、どの辺りが危険なのか確認してほしい」といった、いわゆるコンサルテーション的なものが多いです。Unityに関しては、実は問い合わせはさほど多くなくて……何故かというと、非常にVRと相性が良く、開発環境がとても成熟しているからなんです。
それでも挙げるとすれば、パフォーマンスについての相談ですね。PS4はPCのようにスペックを拡張できるようなものではないですから、「ハイスペックなPCでは動いていたけれど、PS4で最適化するにはどうしたらいいのか」といった相談は結構いただきます。
ただ、それについてはネガティブには捉えていなくて、逆に言うと、ひとつのプラットフォーム、ひとつの環境の中で最適なアプリを作れば、同じ体験をユーザーさんに届けられるということなんです。例えばスマホ向けの開発でたくさんの機種に対応しなきゃいけないだとか、いろんなスペックに対応しなくちゃいけないというのは大変だと思いますが、PS4向けの最適な体験を作れば、ユーザーの皆さんには同じ体験をお届けできる、そこがPlayStationの強みだとは思っています。

昨年のトピックとして、PlayStation 4 Pro(以下、PS4 Pro)もリリースされました。PS VRとPS4 Proを接続すると、よりリッチな体験ができるタイトルも増え始めています。

秋山 ゲーム側でどのPlayStation 4と接続しているかがわかるので、それぞれのスペックを最大限引き出した体験が可能になっています。

PS4 Proに向けて、どのようにコンテンツを作っていけばよいか、といったノウハウもだんだん溜まってきている状況ですか?

秋山 はい。特にPS4 ProはGPUが強いので、VRと非常に相性がいいんです。VRコンテンツは特にレンダリングの負荷が高いので、そういう意味でGPUの強いPS4 ProとVRは非常に相性がいいですね。

Unite 2017 Tokyoで語られること

今年のセッションはどのような内容になるのでしょうか?

秋山 構成としては、まずPS VRが発売から半年経ってどういう状況なのか。それから、PS4 Pro向けにはもっとすごいコンテンツが作れます、というお話をします。そして、いま『Fate/Grand Order』の企画・開発・運営を手掛けるディライトワークス株式会社が絶賛制作中のコンテンツ、『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』ですね。そのコンテンツの制作事例を一緒にお話ししていただこうと思っています。
例えば、「Unityを使ってこういうところに苦労した」ですとか、「こういうところに気を使いながら制作を進めてAnimeJapan 2017に出展しました」といった話をさせていただこうかなと思っています。内容としては、プラットフォーマーとしての情報アップデートと、現場の開発事例になります。また、まだ世の中にはお披露目していない制作中の人気IPを用いた新コンテンツのご紹介を、面白法人カヤックの天野さんから少しだけお話頂こうと考えています。

セッションの受講対象者はどのような方を想定されていますか?

秋山 VRコンテンツ制作に関わっている人たちへ向けた全体情報としてお届けしたいなと思っているので、プログラマー向けの情報が多いとは思いますが、その中でデザイナーさんへ向けては「どんなことに気を付けなくてはいけないか」、プランナーさん、ディレクターさんへ向けては「どういう風に設計をしていくのか」という事例を紹介していこうと思っています。ですから、基本はUnityの初級者から経験者向けを想定しています。

Unite Tokyo 2017で「VRの魅せ方を加速するためのノウハウ」を伝えたい

Unite Tokyo 2017に来場される方へのメッセージをお願いします。

秋山 今回、VRの開発事例をメインにお話しさせていただくので、できればUnityを触ってきていただいて「VRの機能にどんなものがあるのか」というところを理解しておいていただければ、セッションの理解度が大きく増すと思います。
それから、今回お話をする『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』のベースである『Fate/Grand Order』がどんなカルチャーなのか、どういったバックグラウンドを持っているコンテンツなのかというところもぜひ、見ておいていただければ。PlayStation®.Blogにも記事がありますので。

プログラマーだけではなく、いろいろな職種の方に来ていただきたいとおっしゃっていました。

秋山 はい。VRの魅せ方について、どういう考えをもって、どこをこだわって作っておくと魅力が加速するのかというところですので、プログラマーさんだけじゃなく、VRのプロダクションを考える、プランナーさんやディレクターさんにも、ぜひそういった知見を持って帰っていただきたいです。今回のプロジェクトは『Fate/Grand Order』というベースのあるものなので、いかにユーザーさんの期待に応えられるものにしたのかというところをお話ししたいと思っています。ぜひ、楽しみにしていてください。