Oculus

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Partnership Lead, Japan 池田 輝和(右側)

2000年に大学卒業後、株式会社三和銀行(後のUFJ銀行)に新卒入社し法人営業を担当。退職後、オランダのビジネススクールにてMBA取得。2007年から株式会社リクルートにて事業開発に従事。大手航空会社や旅行会社との事業提携を担当。2013年にOculus Rift DK1に出会い、VRの圧倒的な可能性と日本が置いていかれることへの危機感からOculusと直接連絡を取り日本での展開を直談判し、そのままOculusに入社。以来、日本でのコンテンツサイドのPartner Relationsを担う。

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Partner Engineering Specialist 井口 健治(左側)

大学時代に研究室でAR技術を用いたコンテンツを研究、卒業後はグリーにて「踊り子クリノッペ」「ハコニワ」の開発運用等を手がける。12年夏にKickstarterにてOculus Riftの出資募集を発見して即刻飛び付き、VRコンテンツを各種開発。14年にOculusメンバーと邂逅し意気投合、Oculus日本チームの一員となる。現在はVRゲーム開発の支援やOculus Platformの普及に努めている。

“VR元年”だった2016年から、2017年を迎えたOculus

Oculus 社にとって、2016年はどんな一年でしたか?

池田 なんとか2016年のVR元年を越えることができて、我々のようなハードウェアを販売する立場からいうと、世の中から言われているほど「VR元年ってイマイチな数字になっちゃったね」みたいな話はあまり感じていなくて、第一世代に向けた製品としては、初期のマーケットってこんなものじゃないかと思っていたりはしますね。
それに、我々だけに限らず、それぞれプラットフォーマーがちゃんと宣言通りにデバイスをリリースできたっていうのは素晴らしいことだと思います。

昨年、VRがさらなる普及を遂げるためには、「キラーコンテンツが必要だ」という話をされていました。

池田 そうですね、実際、キラーコンテンツを作るためにUnityやUnreal Engineを使って作っていただきたいと思っているので、我々もUniteに出て、「VRコンテンツってこういう風に作ったらいいんですよ」っていう話をしているのですが、なんだかんだ言ってまだまだ本当に面白いVRコンテンツって何なのか、キラーコンテンツって何なのかっていうのを誰も見つけられていないですし、あとはそれを作るために越えていかなければいけない、VRコンテンツならではのハードル……いわゆるVR酔いの部分を回避しつつも、いろいろインタラクションを発生させるにはどうしたらいいのか、そういった部分って、まだまだ研究途上なんです。そう考えると、キラーコンテンツがぽんと出てくる……出てきてくれたら嬉しいですけど、そんな簡単には出てこないだろうと思っていますし、いまのタイミング、2017年というのは、これからキラーコンテンツを皆さんが作れるように、我々も研究をして、こんなテクニック、こんな技術がありますよってお伝えしていきたいですし、いろんな開発者さんが見つけたノウハウやテクニックっていうのも共有しながら、本当のところで何が一番良いのか、大事なのかをみんなで探り当てていく段階だと思っています。

日本では、VR体験施設といった形での展開もはじまっています。Oculusとしては、パーソナルユース以外のアプローチはお考えですか?

池田 日本に限らずアジアは特にロケーション型のビジネスが、花開いているというべきなのか、結構活況ですよね。我々自身はまだそこまで、そちらには積極的に手を出しておらず、 個人でデバイスを所有して使ってもらうっていう方に力を入れています。
今後、ハードウェアはどんどん進化して、小さく軽く薄く、使いやすくなっていって、不便なく長時間付けられるようになっていきます。いまの人たちが常時スマホを手放さずに使っているように、VR、もしくはそのころはARだとかMRだとかっていうようなデバイスが日常的に使われるようになっていくと信じていますし、それを目指して進めています。
ですので、基本的にはいま現時点で我々が提供している製品もコンシューマーデバイスとして使っていただけるように、コンテンツもそれに向けて作っていただきたいですし、我々もそれをサポートしていけるように動いていきたいと思っています。
決して、アーケードやロケーション系のビジネスがよくないとか、Oculusは今後もずっとやらないというわけではないのですが、現時点で我々はコンシューマー向けによりよいコンテンツを出せるようにリソースを投入している感じです。

昨年一年でOculus Riftは、想定されていたターゲットの方には行き渡っていると見てもいいんでしょうか。

井口 まだまだリーチできていないところはある、と思います。いろいろと導入へのハードルっていうのはあるわけですけど、その中で大きなファクターのひとつとして価格がやっぱりあって、そこのハードルを少しでも下げていけるように、モバイルの方ではGear VRを比較的手に取りやすい価格で出していたり、PCの方でも今年3月よりOculus RiftとTouchの価格を大きく下げて、特に日本からは従来より4万円以上安くRiftとTouchのセットが買えるようにしたりと、少しでも多くの人に持ってもらえるように進めています。

PCでVRをプレイするための環境……グラフィックボードの価格帯もずいぶんさがってきました。

池田 そうですね。そこに関しては、我々というよりはVRの中にいる他のプレイヤーさんたちの動きっていうところが大きいんですけど、なるべく我々もそこに協力しながら普及帯のグラフィックボードで動くように、提供するSDKソフトウェアの部分も進化させていけるようには動いています。先ほど、井口からありましたが「価格を下げて、なるべく多くの方に」とは言いながら、現在の価格でマスに普及できるかというと、まだまだ足りない部分があると思うので、そこは引き続き努力をしていかないといけないと思っていますね。

Oculus Touch、Gear VRコントローラーから生まれる新たなコンテンツの可能性

昨年のOculusの普及で、大きなインパクトがあったのはどのタイミングでしょうか?

池田 特にOculus Rift、PCの部分で言うと、2016年12月にOculus Touchというハンドコントローラーを出したタイミングだと思いますね。コンテンツのバリエーション、やれることが変わりましたから、いろいろ全く違った体験を提供するコンテンツが出てくるようになりました。
装着率についてはまだ具体的な数字は公表できないのですが、我々が想定していたよりも少し高めで推移しています。Oculus Touchに対しての期待値っていうのは潜在的に大きかったんだなというところと、実際にTouchを手にしていただいて、そこに対する評価、レビューっていうのも非常に高いものを頂いておりますので、それがいいサイクルを生んで装着率の高さに繋がっているのかなと思います。

これから、Oculus RiftとTouchのコンビネーションでしか体験できないコンテンツが出てくるのが楽しみですね。

池田 そうですね。我々もOculus RiftとTouchでしか体験できないコンテンツも作ってもらいたいというよりは、手を使ってVR空間でいろんなインタラクションを発生させるっていうことができる環境が各デバイスで揃ってきたので、そこに向けて開発者、作り手さんが考えられること、「こういう新しいことができるんです」ってユーザーさんに向けて提供できるものの可能性が広がってきたと思っているんですよね。そこを存分に活かしたものを作っていただきたいですし、Touchのリリース当初っていうのは、まだまだ「手があります」、「手で触れます」、というレベルだったものが、「これを使ってこんなこともできるね、あんなこともできるね」と新しい可能性を発見したものが、今年の半ばくらいからどんどん増えてくるだろうなとは思いますね。

Gear VRについてはいかがでしょうか。

池田 我々の次の盛り上がり、インパクトのあるものが、Gear VRでも手の動きを使った操作を出来るようにする、近日登場の『Gear VRコントローラー』だと思っています。Unite 2017 Tokyoに関してはGear VRコントローラーをメインでお見せしたいですし、お話しするっていう場にしようと思っています。

Unite 2017 Tokyoでの講演と常設ブースでの相談所開設

Unite 2017 Tokyoでは、どのような講演を行う予定でしょうか。

池田 まずは全体的なアップデートですね。いまお話ししていたような2016年、Oculusであり、VRってこんなところだったよって、ある程度皆さんご存知なところはあるかもしれないですが、総括をしながら、今後「Oculus、FacebookとしてVR業界に対してこういうことをしていきたいんです。だから開発者の皆さん、ぜひこんなもの作ってね」というようなお話をしたいと思っています。メインのトピックとしては、やはり今回の5月のタイミングでいくと、ちょうどSamsungさんのGear VRコントローラーが出るので、これに向けた開発に関する部分であるとか、注意点、そういったところをお話しできればと思っています。
もちろん、体験ブースにも設置ができるように調整中で、このコントローラーを使って楽しめるコンテンツをデモとしてご体験いただけるようにしようと思っています。
同時に、ブースにも私や井口が常駐して相談カウンターを設けようと思っていますので、そこに来ていただいて、Gear VRコントローラーについての質問を投げかけていただければと思います。もっとそもそもの部分で、「Oculus Riftって?」とか「Gear VRって?」というお話も大歓迎です。

相談カウンターは、開発者限定ではないんですね。

池田 カウンターに関しては、もう本当に初心者レベルの話でも全然いいですし、だいぶいままで開発やってこられて、かなり細かいマニアックな部分で困っている方もぜひお越しください。Oculusとしての意見を聞きたいというのでも全然かまいません。講演の方は、技術よりというよりは、どちらかというとなるべく多くの方に理解していただける内容になると思います。
我々がいるVRという業界は、本当に技術であるとかテクニック、コンテンツのアイデアが日進月歩で新たなものが出てきているので、我々としてアップデートの情報をお伝えしていきたいと思っていますが、なかなか全てを伝えきれていないので、ぜひこの場を活かして、我々の今持っている限りの情報は伝えたいですし、それを取りに来ていただきたいと思っています。Oculusの人間として開発者の方たちがコンテンツを作るサポートをしたいというのが私たちの心からの想いです。ぜひ話をしに来てください。

井口 Gear VRコントローラーはいままで、Gear VRの頭部にあるタッチパッドか、あるいは別売りの普通のゲームパッド型コントローラーでしか操作できなかったGear VRの入力の可能性を大きく広げるものになると思っています。片手で使えるGear VRコントローラーと、両手で使うOculus Touch、角度だけのGear VRコントローラーと、ポジションまでトラッキングができるTouch、と似たように扱えるところもあれば、違うところもあります。ですので、こういうコントローラーをはじめて扱う人もTouchで慣れている人も、それぞれで気を付けることとか、こういうことができるとかありますので、そういう話をぜひ聞きに来ていただけると幸いです。