CPUを使いこなして、
よりリッチなゲームを開発してほしい。

インテル株式会社/ソフトウェア技術統括部 アプリケーション・エンジニア

酒本 幹夫

アプリケーション・エンジニアとして、インテル® アーキテクチャーに対応いただくソフトウェア企業の多くのエンジニアの皆様をサポートしている。

インテルとUnityのグローバルな取り組み

最初にインテルとUnityが、どのような取り組みをされているのかをお伺いできればと思います。

酒本スタートは2013年のころだったと思います。弊社がAndroidに力を入れ始めたころですね。Unity のAndroid用ライブラリにはアプリを高速で動かすために、ネイティブ・ライブラリーという、JavaではなくてC++のネイティブコードで書かれたものがたくさんあるんですが、当時は、出力されるアプリにARM版のネイティブ・ライブラリーしか含まれていませんでした。そこをぜひ、インテルAndroidのネイティブ・ライブラリーも含めるようにしてほしい、できればUnityで生成するアプリはインテル版もデフォルトで出力するようにしてほしい、という話から協業に至ったのが最初だったと思います。
それがきっかけでお付き合いが始まりました。Unityは当然、クロスプラットフォームができますから、そこから幅が広がりまして、今ではスマートフォンだけでなく、PC版ですとか、いろいろなプラットフォームで協業させていただいています。

酒本さんがいらっしゃる日本ではどのような形で取り組みを行っていらっしゃるのでしょうか。

酒本重点的に力を入れているところが、毎年インテルも変わってきていますので、そのときどきで協業に力を入れる箇所が変わってきているとは思います。当初はAndroidに力を入れておりましたが、最近ではWindowsゲーム、特に多数のコアが搭載された環境への対応などで力を入れています。

Unite Tokyo 2018のブース出展

今回はどのようなブースを出展される予定なのでしょうか。

酒本まず、来場するお客さんは、「Unityさんとインテルにどんな関係が?」というところから始まってしまうので、まずは自己紹介代わりとして、直近の新製品を紹介することにしています。具体的には、インテル® Core™ X シリーズ・プロセッサー・ファミリー、および製品の開発コード名 Kaby Lake Gとして知られる、Radeon™ 搭載の第 8 世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリーを紹介する予定です。 前者の特徴は、最大18コア/36スレッド。サーバークラスの性能を、コンシューマーでも買える時代になったということで、これを展示する予定です。後者は言ってみれば外付けGPUとインテルのCPUが一体化されたような製品をご紹介します。

参考資料: 8th-gen-radeon-rx-vega-m-product-overview [PDF] (P.11より引用)

グラフィックボードとCPUがひとつのユニットになっているんですね。

酒本第 8 世代インテル® Core™ モバイル・プロセッサー、Radeon* RX Vega M グラフィックス、4 GB のグラフィックス専用高帯域幅メモリーを搭載したことで、薄型軽量のウルトラポータブル・ノートブック PC やミニ PCであっても臨場感あふれるリッチな VR 体験ができるようになりました。
このプラットフォームを搭載した製品が各社より発売される予定ですが、Unite Tokyo 2018当日では、インテル® NUC キットという非常に小型なデスクトップを展示し、また同時にそれらでMade with Unityのゲームを同時に体験できるようにする予定です。DELL XPS Laptops for BusinessHP SPECTRE x360

VRのコンテンツを開発されている方たちにとってKaby Lake Gの存在は気になりますね。

酒本そうですね、プレーヤーの裾野を広げるといいますか……今までですとかなり大きめのデスクトップを組まなければいけなかったのが、このサイズでも使えるようになるというのは、選択が広がるというところにもなりますね。Uniteに来られる方は開発者の方が多いと思うのですけれども、単にエンドユーザーの利用環境というだけでなく、開発者の観点からしてもデスクトップで大きく場所を占めるようなものがこのくらいのものでも肩代わりできるようになってくるというのは、大きなメリットだと思います。

Kaby Lake GのグラフィックとCPUの性能は、どのくらいのものになるのでしょうか?

酒本例えば、従来環境比で1.13倍の性能が出ております。

参考資料: 8th-gen-radeon-rx-vega-m-product-overview [PDF] (P.15より引用)

チェックボックス一つで大きく変わる、CPUパワーの引き出し方

そのほかには、どのような展示を予定されていますか?

酒本実際にCPUの能力を活用してグラフィックス描画を最適化したアプリケーションを動作させ、「開発者の皆さん、こういう便利な機能があるので使ってね」というご紹介をする予定です。

グラフィックをより効率的に描画することができると。

酒本そうですね。これも動画を見ていただくのが一番早いかと思うんですけど……例えば、右(Core i5)と左(Core i7)で、Core i7のほうがパーティクルなど、表現がリッチになっています。「コアがたくさん載っているCPUだとこれだけ描画の内容を増やしても全然性能に影響ないから、皆さん、もっと使おうぜ」というのが展示の趣旨になります。 

まだまだUnityを利用している開発者の方は、CPUをそれほど使い倒していなそう……ということでしょうか。

酒本そうですね。主にコンソールをメインの開発対象とされるかたは、対象プラットフォームに多くのコアが搭載されていないこともあり、CPUのリソースを活用される事例が多くないんですね。  ところが、Unityのクロスプラットフォーム環境を活用し、Windows向けを出力するときに、ものによってはチェックボックスを1個オンにするだけで容易に映像効果を追加できるようなものがあります。例えば、リアルタイムGIという効果があります。

酒本ベイクドGIという事前に貼り付けてあるものとの比較になりますが、この機能を有効にしてある場合、壁に反射している炎、こちらがリアルタイムに描画されているのがお分かりになりますでしょうか。これは開発者がUnityの特定のチェックボックスにチェックを入れるだけでこの効果が得られます。
最近発売された弊社のラインナップでは、CPUのコアが従来よりも多く搭載される製品が増えてきました。一方、多くのゲームでは、依然CPUのリソースが余ったままになっているケースが多いようです。そういったとき、Unityの特定のチェックボックスを1個付けるだけでGPU側のリソースを消費することなく、描画の内容を向上させることできますので、ぜひこういった機能を活用して、もっといいゲームをつくってください、というのがデモの内容になります。

チェックボックスを入れることによる、デメリットというのはとくにないということでしょうか?

酒本そうですね。主にGPUが主なボトルネックとなっていることが多い最近のゲームでは、性能への影響はほとんどないと思われます。これについては、英語になりますが、こちらに資料がまとまっています。Enhancing VR Immersion with the CPU in Star Trek™: Bridge Crew

Unite Tokyo 2018に来場される方へのメッセージをお願いいたします。

酒本太陽のフレアや、星雲、および星雲からの光が宇宙船に反射しているところなどにもご注目ください。当日はこの比較動画や、実際にこれらの機能が搭載されている『Star Trek Bridge Crew』というゲームも展示する予定ですので、ぜひ実物をご覧いただければと思います。ぜひ「CPUを活用するとこんなにうれしいよ」というところを聞いていただければなと思います。