もう一味加えよう!
事例から見る Unity for PlayStation®4 開発 Tips

ソニー・インタラクティブエンタテインメント/ソフトウェアビジネス部 次長

秋山 賢成

ソニー・インタラクティブエンタテインメントにて、ゲーム・コンテンツ制作コンサルティング及び技術サポートに従事。多数の著名ゲームタイトルの制作に関わり、現在に至る。日本・アジア地域において、PS4® 及び PlayStation®VR の技術講演を実施し、技術デモの制作・ディレクションなども行っている。

UnityでPS4 ®タイトルを開発するときに知っておきたいこと

Unite Tokyo 2018では、PS4®向けにUnityで開発されたゲームの事例を紹介しながら、開発時に知っておきたいさまざまなことについてお話しになるそうですね。

秋山はい。今回PS4®向けにUnityで作られたゲームアプリケーションの開発ノウハウ、テクニック、アドバイスですね。そういった情報を皆さんにお伝えして、ゲームの良さをもう一段階上げていただいて、あと一歩、もう少しクオリティを高くすることに苦心されている皆さんをお手伝いできればと思っています。

セッションの内容は、技術的な内容がメインに?

秋山はい。基本的にはテクニカルな話が中心になります。
セッションについては、大きく分けて2つ考えています。まずはUnityを使ってPS4®向けのゲームを作ってきた皆さんを我々がサポートして分かってきたところ、みんなが使えるTipsをお話したいというのと、PS4®のゲームタイトルを作っているデベロッパーさんに私からヒアリングをして、お伺いしたノウハウをタイトルと一緒に紹介させていただくという形です。

お話しできる程度で結構ですが、セッションではどういったノウハウについて聞けるのでしょうか。

秋山Unityで開発をするにあたって、多くの方がつまずくポイントやその解決方法について、「PS4®だったらこんなこともできますよ」ですとか、「サーバーをこんな使い方で進めればもっといいものができますよ」といった一部デベロッパーさんには既にお伝えしているノウハウを、このような機会を通じて更に幅広いデベロッパーの皆さんさんにお伝えできれば、クオリティを一気に底上げできるかな、と思っています。
主にグラフィック系の方にオススメできる話題が多いと思います。
それから、現時点では弊社でも把握していない各社が色々試行錯誤した結果、「これ、こうすればいいのでは?」というところがこれからまた出てくると思いますので、それも吸収してお話しできたらいいなと思っています。

受講対象は、「Unityを使用してPS4®向けにゲームを開発している方すべて」といってもよいのでしょうか。

秋山はい、これはもう、皆さんにぜひ聞いていただきたいと思っています。PS4®開発用テクニック集のような話になるので、どこかで講演資料をご提供できればより良いかなと検討しているところです。
くわえて、これからPS4®向けにゲーム開発をやってみたいと思っている方、やろうとしている方もつまずく前に「こういうやり方もあるのか」というTipsを頭の中に入れておいていただければいいですね。 Unityを使っていると、普段はサクサクできるけれど、必ずどこかでつまずくことがあると思うんです。やりたいことをどんどん突きき詰めていくと、突然パフォーマンスが出なくなったとかバグったとか、そういったところをある程度、未然に防いで、悩む時間を減らせばよりいい物を作る時間が増えると思います。

昨年のUnite直前にも秋山さんへインタビューを実施しました。あれから一年でUnityを使用されているデベロッパーさんへのサポートはどのように変化してきましたか?

秋山デベロッパーのみなさんがUnityを使用しての開発に慣れてきたところがありますね。初歩のところでつまずくことがほぼなくなって、全体のゲームクオリティが上がってきています。その分、より深い質問が増えてきています。
例えば、「PS4®でグラフィックを一段階上げたい、パフォーマンスを稼ぐためにチューニングをしたい」という質問が多いですし、特にPS VRに関しても「負荷がそれなりに高いというところで、もうちょっとクオリティを出したい」とか、「90fpsもしくは120fpsを目指すためにあとちょっと足りない」というところのパフォーマンスチェックを我々がお手伝いして、「ここはボトルネックだからここは削りましょう」とか、「ここはこういう風にしてみてはどうですか」という。そういった相談が増えてきました。
去年は「PS VR向けにどうやったらつくれますか?」というレベルだったので。ずいぶん深いところまで来ている印象があります。
コンテンツを作るための質問から、コンテンツのクオリティを上げるための質問に変わった、それは顕著に感じています。

PlayStation®VR のアプリ開発シーンを通して見るこれからのVRコンテンツ

PS VRについては、現在も堅調なセールスが続いています。PS VR向けのコンテンツについても、クオリティが上がってきているのでしょうか。

秋山色々なジャンルのVRコンテンツが増えてきたとは思っています。それはそれぞれに良さがあるということも如実にわかってきています。例えばライドものや体を動かすものに関しては、集中型で短いコンテンツが良い……これは疲れてしまうからですね。
加えて増えてきたのがノンゲームです。ゲームではないけれどVRでいい体験をするものや例えば、体を動かさないけれど、その世界に実在感を高めて没入していくという「見るコンテンツ」。また、見るだけではなく、その世界の中で見るという体験ができるものが増えてきていて、とても評判が高いです。 ダウンロード数も当然参考にしていますが、例えばアニプレックスさんが出した『傷物語VR』も非常に評判がよかったですし、『カリード Young Dumb & Broke VR』のように、VRミュージックビデオも出てきました。 傷物語VR カリード Young Dumb & Broke VR

秋山ミュージックビデオの世界をVRの中で体験をする、要は360度ではなく、カリードの世界、音楽の世界をCGにしていくものですね。これはソニーの「Lost in Music」(ロスト・イン・ミュージック)という最新の技術を活用して音楽ファンに新しい体験を届けるブランドプロモーションの一環でやっているもので、去年も「ザ・チェインスモーカーズ『Paris』VRミュージックビデオ」をリリースしています。 ザ・チェインスモーカーズ『Paris』VRミュージックビデオ

秋山今年はフルCGではなくて、もともとあるカリードのミュージックビデオの世界を、VRの世界で表現し直したという視聴型の体験でした。
そういった体験型の短いコンテンツというものの良さと、一方でVRとしての体験はやや弱いけど長く見るものとで、お互いの良さが共存しあっている状態なのかなと思っています。色々なジャンルのコンテンツが増えてきたということはVRの可能性をさらに広げているのではないかと思っています。

これからのVRコンテンツでキーになるのはどのような要素になるとお考えですか?

秋山VR自体は加速していきますし、加えてゲームの体験も加速していくものだと思っています。その中でキーになるのはネットワークだと思っています。VRの中でさまざまな会社さんがコミュニケーションコンテンツに取り組んでいる、これはゲームの中でのネットワークやコミュニケーションが重要視されているところですよね。VRでコミュニケーションがさらに身近になる、ゲームの意味を加速するというのを含めてゲーム、VR、ネットワークが組み合わさったすごいゲームが出てきて、さらにVRが普及してくれたらいいなと思います。
これは、単純にVR対応のMMORPGを作ればいいという話ではなくて、VRに合ったコミュニケーション、VRに合ったネットワークゲームが、新しいジャンルを生み出すのではないかと思っています。ゲームをVR化したのではなく、VR上で表現をするゲームという形になっていきます。

開発の段階から「VRの世界で何を体験するか」を考え、作り上げていくわけですね。

秋山発売前のタイトルではありますが、サンソフトさんのMade with Unityタイトル『DARK ECLIPSE』もVR上でどういう体験をしたらどうなるかということをずっと追及されています。素晴らしいユーザーインターフェイス、素晴らしいユーザーエクスペリエンスの両方を実現するために試行錯誤して、ビルド&ブレイクを繰り返して素晴らしいものができ上がってきているので、そういう風に「VR上で体験を表現したらこういったゲームになる」というひとつの例になるのではないかと思います。

「VRでの酔い」について、最近は聞かれないようになってきたのは、開発者側で知見がたまってきているのでしょうか。

秋山酔いに関しては皆さん知見を持たれてクリアされているケースが非常に多いですね。それはこの一年間、皆さんが情報をシェアして「VRをみんなが育てていく」という風潮を作っていただいたのが大きいと思います。一人の開発者が無茶をしてコンテンツを作った結果、それを体験したプレイヤーさんがVRを嫌いになる、といったことがないように、みなさんすごくケアをして作られていたと思います。そういう技術もしくはノウハウが浸透した結果ですね。

Unite Tokyo 2018 来場者へのメッセージ

Unite Tokyo 2018では、Made with UnityのPS4®コンテンツがプレイできるブースがあるそうですね。

秋山はい、Unityで作られたタイトルを展示する予定です。
当日のセッションでもお話しするとは思いますが我々はPlayStation®という大きなプラットフォームとして、皆さんの作った素晴らしいコンテンツを全世界の皆さんに届けるということをお手伝いさせていただきたいですし、そのコンテンツをよりよい体験にして、もう一段階よいゲームになることをお手伝いさせていただきたい。そういったところの情報をお伝えしたいですね。

最後に来場される皆さんにメッセージをお願いします。

秋山講演でも触れると思いますが、ゲーム開発を学ぶITキャンプ・スクールを運営するLife is Tech !さんと、PS VRのコンテンツをUnityで作る中高生向けのワークショップ『VR CAMP with PlayStation®VR』を開催しました。Unityを使ってゲームを作っている方に、ぜひご協力いただければ、というお話しもしたいと思っています。
これは我々がやるだけではなくて、日本の子供たちに「ゲームって素晴らしいんだよ」というメッセージを一緒に伝えていくことを継続してやっていきたいと思っています。 夢のオリジナルVRゲームを自分たちの手でつくる! 「VR CAMP with PlayStation®VR in WASEDA」レポート