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Tokyo
2019

インタビュー

HoloLens 2で進化する Mixed Reality テクノロジー

2019-08-22 update

鈴木 敦史

マイクロソフト テクノロジーセンター テクノロジーアーキテクト

世界37都市に展開する技術センターであるマイクロソフト テクノロジーセンターで、Mixed Reality&AI、ロボティクスのスペシャリストとして活躍。2017年から上智大学で非常勤講師をつとめるなど、最新ITテクノロジーの普及に尽力する伝道師としても活動している。

HoloLens 2で広がるMRの活用シーン

業務のかたわら、上智大学で講師をされているのですね。
鈴木

授業の準備などもあり、大変なところもありますが、楽しいですよ。演習中心の授業で、これまで一度もコードを書いた経験が無いような文系の学生に対して、Microsoft Azureを使ったアプリサービスの制作などを教えています。学生にとってスマホアプリは身近な存在ですが、インフラ側の事情はほとんど知られていません。そこで、クライアント側ではなくインフラ側の仕組みについて理解が進むような演習を行っています。

それは興味深いですね。ただ、実際にコードを書かせるのは大変ではないですか?
鈴木

ご指摘のとおりなので、一行もコードを書かせていません。ブラウザ上で機能を指定して、組み合わせていくだけで、完成するような内容になっています。そのレベルであれば、学生も楽しんでやってくれるようです。

同じようにUnityをはじめとしたゲームエンジンやフレームワークの普及で、開発に関する敷居がぐっと下がっていますよね。
鈴木

まさにそうですね。

今回お話をお伺いするHoloLensについても、多くの開発者から注目を集めています。実際HoloLensについては2017年の発売開始以来、日本でもさまざまなハッカソンが全国で開催され、話題を集めました。
鈴木

日本は世界的に見ても、非常にHoloLensの開発者コミュニティが盛り上がっているリージョンの一つです。我々も驚かされました。

一方でHoloLens 2については、本年2月にモバイル国際見本市「MWC19 Barcelona」で発表されたものの、まだ一般に発売されていないこともあり、何ができるか良くわからないという開発者も多いと思います。今回の講演でも触れられると思いますが、まずは改めてHoloLens 2の特徴について教えてもらえますか?
鈴木

わかりました。ご存じのとおりHoloLensはWindows 10を搭載した Mixed Reality(MR、複合現実)デバイスで、HoloLens 2はその後継機種になります。その上でHoloLens 2は現行のHoloLens(以下、HoloLens 1)をベースに、より多くのお客様に使っていただけるような製品にすることを目的に開発されました。

興味深いですね。

鈴木

HoloLens 1はリリース以来、世界中で非常に高い評価をいただいています。特に、法人のお客様、いわゆるB2Bの業務での活用・導入検討が活発に進んでいます。具体的には研究開発用途であったり、我々がファーストラインワーカーと呼称している、工場で保守管理業務などを行う現場担当者や、そういった人々のトレーニング用途などですね。例えば、工場の計器類をHoloLens越しにチェックしながら、異常を見つけたら即座にアラートで知らせてくれる、などです。IoT非対応の機械でもHoloLens越しであれば、針の動きをリアルタイムにトラッキングしながら、異常値を検出することが可能です。HoloLens 2では、HoloLensをご利用いただいたお客様からのフィードバックを元に、大幅な進化をとげていますので、よりファーストラインワーカーのシナリオでの活用が促進されると考えています。

ほかの分野はどうですか?
鈴木

そうですね。B2B以外の市場としては、アミューズメントパークなどをはじめとする、ロケーションベースエンターテインメントでの利用が進んでいます。特に、HoloLens 2では操作性や装着性が向上しているため、より直感的に誰でもより簡単に使いやすく進化をとげているので、より一般のお客様に使っていただけるようなシーンも想定できます。エンドユーザーに直接購入していただくのではなく、企業の皆様にご購入いただき、その上で一般のお客様に使っていただくような、いわゆるB2B2Cのビジネスでの活用を想定しています。

それは大きな変化ですね。実際にHoloLens 1が発売された時、そうした用途を考えた開発者も多かったのではないかと思います。それがいよいよ現実味を帯びてきたというわけですね。
鈴木

そうですね。

HoloLens 2で改良された3つの要素

それを可能にするために、HoloLens 2ではどのような改良が行われているのでしょうか?
鈴木

大きく3つの改良を施しました。第1に没入感の拡大ですね。HoloLens 1のMR体験は斬新なものでしたが、視野角が狭く、ホログラムが見切れてしまうというフィードバックを多くのお客様からいただきました。これがHoloLens 2では視野角が対角線ベースで2倍に広がり、視野角の狭さをあまり感じさせず、自然にホログラムを見ることができ、より没入感が増しています。

それは大きいですね。
鈴木

第2に操作感の向上です。HoloLens 1では操作をする際にエアタップと呼ばれる、目の前で人差し指と親指をつけたり、離したりするような、独特のジェスチャーを行う必要がありました。マウスのクリック操作をモチーフとしたものでしたが、難しいと感じられた人がいたかもしれません。実際、スムーズに行うためには、ある程度の慣れが必要でした。

たしかに、最初は戸惑いました。

鈴木

これがHoloLens 2では両手の十本指を個別に識別できるようになりました。これによりエアタップではなく、より現実に即した動作ができるようになります。たとえば、ホログラムを手で掴んで移動させたり、回したり、両手でつまんでサイズを大きくしたりすることができます。ほかにも、表示されるボタンを押したり、ダイアルを回したりといったことです。ドアノブをつまんで開けたり、箱を持ち上げたり、といった動作も可能になります。

HoloLens 1ではホログラムに対して、わざわざマウス操作に似たエアタップを行うという違和感がありました。これが空間に即して、より自然な動作で入力が可能になるということですね。
鈴木

まさにそうですね。

これまでXRコンテンツでは入力動作をどのようにするか、という課題がありました。これが実際の動作に即した入力で可能になるとすれば、一気に敷居が下がることが期待されます。
鈴木

そして最後に装着感です。全体的なデザインを見直し、頭部へのフィット感を高めました。特に重心のバランスをデバイスの中央に配置し、おでこ部分と後頭部にパットを配置したので、帽子をかぶるように装着することができます。これまでのように、鼻が痛くなったり、バンドで頭を強く締め付けて痛くなるということがありません。また、これまで同様にメガネをかけた人でも使える構造になっています。

Azure MRで、HoloLens 1の”アキレス腱”を解消

先ほどB2B2Cという話がありましたが、HoloLens 2でどのような利用シーンが想定されるか、ゲーム以外の可能性も踏まえて教えてください。
鈴木

そうですね……たとえばHoloLens 1でよく用いられた、工場での保守点検業務などには、引き続きご活用いただけます。その上でHoloLens 2ならではの活用シーンといえば、デザイン分野ですね。自動車や建築デザインなどの分野で、ホログラムを見ながら多人数でミーティングやレビューをしていただけるようになります。これにはHoloLens 2とあわせて弊社が発表したAzure MRの機能も関係しています。

HoloLens 1でも複数デバイス間でホログラムの共有はできましたが……?
鈴木

はい。ただ、一度に共有ができる人数に制限があったり、ホログラムの解像度に限界があったりしました。これがHoloLens 2ではオンライン上で世界中の人々とホログラムを共有することが可能になります。ホログラムの解像度も飛躍的に向上します。

それは気になります。どういった仕組みなのでしょうか?
鈴木

先ほども言いましたが、HoloLensはWindows10が搭載された頭部装着型のスタンドアロンPCです。一般的なVRデバイスと異なり、ケーブルレスで動作させられますが、HoloLens 1ではホログラムのデータをすべてデバイス側で保持する必要がありました。複数のHoloLens 1で体験を共有する際も、それぞれのデバイスで同じデータを保持しておき、位置情報データだけを共有する仕組みを採用していました。そのためホログラムのクオリティ面で限界があり、高精細なCG表現が求められるデザイン分野への応用が進みませんでした。

たしかに、HoloLens 1に搭載されたCPUは1GHzのAtomプロセッサで、処理能力に限界がありました。しかし、HoloLens 2に搭載されるCPUもSnapdragon 850で、いわばスマートフォンレベルですよね?
鈴木

そこで鍵を握るのがAzure MRです。これはホログラムデータをMicrosoft Azure、すなわちクラウド側に保持しておき、リアルタイムにストリーミング映像でHoloLens 2に表示させるというものです。これによりHoloLens 2側のハードウェア的な制限を取り払い、高品質なMR体験を世界中に届けることが可能になります。HoloLens 1では一度にホログラムを共有できる人数として、4〜5名が現実的なところでしたが、HoloLens 2ではインターネット帯域の限界内であれば、制限がなくなります。

なるほど、御社ではXbox Oneのゲームがクラウドで動く「xCloud」をはじめ、クラウドゲームの技術に投資を続けていますが、この技術が応用されているわけですね。
鈴木

そのとおりです。しかも、Azure MRの配信先はHoloLens 2だけでなく、スマートデバイスにも対応しています。これによりHoloLens 2のホログラムがiOSやAndroid端末でも共有可能になります。わざわざHoloLens 2を装着しなくても、スマートフォンやタブレットで製品レビューが可能になるというわけです。

HoloLens 2を人数分そろえなくてもいいのはありがたいですね。
鈴木

これは余談ですが、先ほどxCloudの話が出ましたよね。実はAzure MRにはE3 2019で発表させていただいた、スマートデバイスを用いた拡張現実ゲーム「Minecraft Earth」の技術も活用されているんですよ。具体的には、スマートデバイスの画面越しに拡張された映像を現実空間の座標と紐付ける「Azure Spatial Anchors」と呼ばれる技術です。こんなふうに事業領域は異なりますが、弊社ではMRについて、全社的な取り組みが行われています。

Dynamics 365との連携で業務を支援

デバイス面ではHoloLens 2、インフラ面ではAzure MRの話を伺いましたが、ソフトウェア面ではどのようになっていますか? 現状、HoloLens対応ソフトは多くないと思いますが……。
鈴木

それが、弊社がリリースしているDynamics 365のMR対応です。もともと業務アプリケーションをクラウド上で運用するビジネスアプリケーションで、デスクトップ向けのソフトウェアでした。これがHoloLens 1でも使用できるように機能拡張されており、HoloLens 2でも引き継げます。

個人向け製品のOffice 365と違い、Dynamics 365については耳慣れない人も多いと思いますので、簡単に説明していただけますか?

鈴木

平たく言うと「企業の顧客情報を可視化し、様々な情報とともにクラウド上で管理してくれるツール」となります。企業にはさまざまな立場や役職の人々が存在し、さまざまな情報が出入りしています。具体的には会計・営業・顧客情報などですね。これらの情報をクラウド上に集約し、一元管理することで、経理・営業・物流・調達・経営者など、立場が異なる人々が迅速に情報を活用できるようになります。これをサポートするのがDynamics 365です。Office 365とも連携し、使い慣れたWordやExcel上でデータの作成や閲覧などが可能です。

Officeのように個人の生産活動を支援するのではなく、企業の生産活動を支援するソリューションというわけですね。ということは、導入は企業からの依頼を受けたITベンダーが導入支援を行う例が一般的なのでしょうか?
鈴木

はい、そうした例が一般的です。

概念は分かりますが、これがHoloLensとどのように連携するのか気になります。
鈴木

現在、Dynamics 365ではHoloLens向けに「Remote Assist」「Layout」「Guides」という3つのアプリケーションを提供しています。「Remote Assist」は遠隔地のマネージャーとMR映像を共有しながら、特定の問題を解決するためのソリューションです。工場で機械が故障した際などに、状況を互いに共有しながら、マネージャーの指示に従って修理を進めるといった活用が可能です。

これに対して「Layout」はフロアに機材や設備を配置する際に、物理空間上でホログラムの配置を行い、様子を確認できるというものです。配置した内容はオンラインで他と共有できるため、上司によるスムーズな承認が可能になります。そして「Guides」ではHoloLensを用いて、作業の操作手順などをトレーニングするためのマニュアルを 3D ホログラムで作成することが可能です。座学ではなく、MRを通して体験的に学ぶことで、短時間で効果的なトレーニングが可能になります。

なるほど。
鈴木

これら以外にも、まだiOS向けのプレビュー版となりますが「Product Visualize」というアプリケーションも提供しています。営業担当者が製品の3Dデジタルデータをお客様の環境に配置し、画面越しに共有することができるというもので、お客様からの要望を直接画面に書き込み、営業案件に関連付けることもできます。HoloLensがなくても、Dynamics 365ベースのMRアプリケーションが活用できるというわけです。

豊富な資産を活用し、今日からテスト開発

HoloLens 2+Azure MR+Dynamics 365で、ユースケースが様々に広がりそうですね。この土台をベースに、開発者が実際に端末側で使用するアプリケーションを、Unityで作成するという流れでしょうか?
鈴木

はい。HoloLens 2、iOS、Androidの各デバイス向けに、それぞれのネイティブ言語でアプリケーションを開発していただくこともできますし、Unity上で開発していただくこともできます。サンプルやAPIなどもご用意しています。ビジュアルデータについてはCADデータを流用される例が多いですね。

ゲームなどのB2C製品と違い、B2B・B2B2Cでは企業の生産活動に応じて個別のソリューションを開発することになるため、開発の座組も変わってきそうですね。
鈴木

そうですね。ただ、そこでもUnityの強みである高速なイテレーションは変わりません。弊社が提供するAPIなどを活用して、効率良くアプリケーション開発を行っていただけると思います。

ドキュメントの日本語対応などはどのようになっていますか?
鈴木

順次対応していきます。ローカライズには時間がかかるため、まずは英語版の動画チュートリアルやドキュメントに加えて、機械翻訳されたバージョンをご用意しています。そのうえで重要度の高いものから、クオリティの高いローカライズを進めていく流れです。

「Unite Tokyo 2019」では講演に加えてブース出展も行われると思いますが、どのような内容になりますか?
鈴木

HoloLens 1またはHoloLens 2を実際に触っていただき、これまでご説明してきたような内容をご体験いただける予定です。

最後に、講演やブースでの体験を通して、HoloLens 2でのアプリケーション開発に関心を持った開発者が、デバイスが発売される前に、何か実際にできることはありますか?
鈴木

まずは公式サイトから開発者プログラムに参加してほしいですね。チュートリアルがかなり充実していますし、エミュレーターが用意されていますので、先行してアプリ開発を行うことができます。講演内でも触れる予定ですが、iOS向けにアプリ開発を行って、いち早くMR体験を試していただくこともできますので、ぜひチェックしてみてもらえればと思います。

Microsoft HoloLens 2 公式サイト