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Unite
Tokyo
2019

インタビュー

世界トップクラスのARプラットフォームVuforiaを拡張するために

2019-09-20 update

山田 篤伸

PTCジャパン株式会社/Sales Business Development Director

2012年、PTCジャパンに入社。サービスライフサイクル管理(SLM)ソリューションの日本での事業開発担当として、自動車、重工業、ハイテク業界を中心に、製造業のサービス事業化を推進するための啓蒙活動やアセスメントなどを幅広く手掛ける。

モノをデジタルで把握し、その情報をフィジカル世界で活用する

最初に、PTCについてお話いただけますでしょうか。
山田

PTCグループは、アメリカのボストンに本社がありまして、ここは世界で初めて3DのCADを商用化した会社になります。今回、Unite Tokyo 2019でもお話する予定のVuforiaのビジネスを買収する前にやっていたのがCADと、PLM(Product Lifecycle Management)という製品の設計データを管理する仕組み。それから、現在私たちの大きな技術の柱になっているIoT(Internet of Things)、それに加えてAR。クアルコムさんからVuforiaの技術を買い取ってから、もう4年になります。

その日本法人であるPTCジャパン株式会社では、どの分野に注力されているのでしょうか。
山田

事業領域は、そのすべて、全方位でやっております。ビジネスの柱はずっとCADとPLMだったのですが、随分最近はIoTとARが急成長してきておりますので、そこに社内のリソース等をかけているといった状況ですね。 伝統的なCAD、PLM、それからIoTに関してはBtoBのビジネスを、ARに関してはやはりVuforiaがUnityの下回りに使われているということもあって、どちらかというとBtoCの方が多いですね。

今回のUnite Tokyo 2019のセッションについては、どういった内容をお考えですか?
山田

Unity、あるいはUnite Tokyoを通じてVuforiaのユーザーをさらに拡大していきたい。BtoCでVuforia Engineの優秀なポイントを訴求しながら、より多くの開発者の皆さんにわれわれのサービスのユーザーになっていただく、そしてさらにわれわれのサービスをより深く使いこなしていただくというのが、PTCジャパンとして本社から命じられていることでもありますし、私たちがUniteを通じてやりたいことになります。 実は、現在Vuforiaに日本から登録されているデベロッパーの方々だけで1万人近くいらっしゃるんですね。この方々にUniteを通じて、Vuforia Engineの新機能であるとか、魅力だとか、そういったものをお伝えするというのが一つの目標です。 一方で、現状ほとんどのARアプリケーションって、エンターテインメントが主流だと思います。ゲームだとか、セールス・マーケティングの分野ですね。このノウハウを製造であったりアフターサービスであったり、もう少し企業の他の事業分野にARの仕組み、あるいは技術や能力といったものを普及させようとしています。エンターテインメントの方ではない開発者の方々を集めて、どうやってARアプリケーションを作って利用するのか、という教育や啓蒙活動をこれから立ち上げようとしているところですね。

ゲーム系の開発者の方々がBtoBにシフトしてもらうサポートをする、というよりも、BtoBで既にやっている人たちに、Unityを用いて新たなUI / UXの使い方を取り入れてもらおう、というイメージでしょうか?
山田

どっちか、と決めているわけではないですね。エンターテインメントの方々がBtoBの領域に踏み込んでいただけるのであれば、われわれもそれを支援します。ただし、やはり製造やアフターサービスの現場だったりすると、製造現場の専門知識が必要になってきます。そうなると、そのエリアで既に活躍されている方々にARを渡すのか、どちらがいいんだろうか、というのは私たちの悩みでもありますね。

それは、日本国内に限った悩みではなく、世界で見てもまだまだこれから、ということなのでしょうか。
山田

そうですね。AR自体の産業利用、企業内での利用が始まったのが一昨年前だったと思います。先行企業が取り組みを始めて、今年になってからやっと先行企業の成功事例がアメリカあるいは西ヨーロッパの方からちょこちょこと出てきました。製造やアフターサービスではなく、セールス・マーケティングの現場だと、エンターテインメントと近しいところがあるので、そこは随分成功している領域だと見ています。ARカタログを作る、とか。そこは随分進んでいるのですが、やはり産業向け、企業の内部業務向けというのは、やっと良い事例が出てきたかなという気がします。 例えば、医療機器メーカーのお客様では、実証実験を相当数やっています。医療向けには、ARの機能にHoloLensのロケーションをトラッキングする機能を合わせて、われわれがソリューション仕立てにしているVuforiaのファミリー製品があるのですが、それの実証実験が始まっています。そして、現状で取り組みが進んでいるのは、半導体製造ですね。

ARの採用が進んでいる現場にある、意外な理由

製造の現場でのAR利用が進んでいる理由というのはどういったものなのでしょうか。
山田

意外なことに ”人手不足” です。近年、いわゆる熟練工と言われる方々がどんどん定年退職されています。一方で、日本の製造ラインで人を雇うのはなかなか難しいんです、売り手市場で。中国ですと、製造ラインにいる方で技術を持っていると、よそに引き抜かれるという話があるそうです。製造の現場はグローバルで見て、現在数百万人のポジションが空いていると言われています。その中で、どうやって知識・技術の伝承をしていくか。もはや、紙に書いてそれを読ませて理解させるのには限界があります。要は、人に覚えさせるためには実際にやってみせた方が、読ませるよりも良いと昔から言われているのですが、やってみせることができる何かが必要になりました。と、言うことで、ARが現場のトレーニングを担っています。 製造ラインというのは、現場に入る前にかならずトレーニングを行います。そのトレーニングに、ARが用いられています。もう一つは、実際の組み立て現場。現状、組み立て現場というのはかなり複雑化していまして、ライン一つで色んな仕様の製品を作らなければいけないんです。「並べて切ったモノに対して何をする」という指示をどうやって適切に出すか。これをリアルタイムに自分が組み立てる部材のラインに指示を出せるのは何かというと、やはりARになります。こういった役割で、ARがかなり期待されています。 もう一つ、とても重要な役割があります。それはセーフティです。やはり労働者の健康を守るというのは雇用主にとって大事ですから、たとえば、「ここから先に踏み込むと感電する恐れがあります」、「ここは頭上から化学薬品がたれてくる恐れがあります」といったアラートを出してあげたいわけです。それを床や壁に貼るのでは、汚れがついて見えなくなったり、はがれ落ちてしまったりするわけですし、作業員も動き回るので、なかなかアラートが適切に出せない。それを、たとえばHoloLensのロケーション機能を使いながら、「ここから先に踏み込むとダメ」のようなガイドが目の前に現れるようにする。そういった具体的なニーズがたくさん現場の方から報告されております。

そういった製造の現場では、安全面や生命に関わる部分を担うために、しっかりとしたシステムが必要になってきますね。
山田

そうですね。しっかりと与件定義をやるので、エンターテインメントのAR技術と比べると開発のサイクルが長めにはなりますね。ただ、新しい技術ということで、昔みたいなウォーターフォール型でやっているということではなくて、割とアジャイルな開発の進め方をしている人も多いようです。

最後のQAの部分はしっかりやっているということですね。
山田

はい。ランテストにしっかり時間をかけているようです。ただ、まだまだ皆さんもARに依存しきっているわけではないので、補助用の道具という意識が強いですね。ARがなくても通常の現場はできます。ただ、ARがあればより良くなる。

日本国内で、ARを主に使いたいという会社は、どういった業種が多いのでしょうか。
山田

自動車・重工・製薬・科学系・建設現場と、多岐にわたります。

なるほど。そういった会社のニーズは、やはり揃って「人手が足りない」というのが多いというわけですね。
山田

そうですね。あるいは、作業の正確性をより担保したい、というニーズもあります。Unityのエンジニアさんたちにこんな話をするのも釈迦に説法かもしれませんが、ARの良いところって、人間が捉えている3次元の世界を3次元のまま解釈できるというところだと思うんです。今、建設などの現場で何が起きているかというと、2次元の図面を見て、それを自分の中で3次元にリマップして見ているそうです。しかしそれだと頭が疲れますしエラーも起きてしまう。なので、2次元の図面をやめて、3次元で見ている世界にデータを投影していくというところにニーズがあります。作業の正確性を担保できる一つの方法だろうと、期待されていますね。 UnityでBIMデータを読み込めるのはすごく良いと思います。課題は、BIMデータに落とせない現場をどうするか、ですね。全部、建設CADで作られていればいいのですが、やっぱり現場ですり合わせて建設が進められている場合もあるので。 私たちのパートナーに「Matterport」という企業があります。ここのサービスは何をしてくれるかというと、360°カメラで建物の中を撮ると深度センサーで距離が測れるようになるんですね。そこから擬似的なBIMデータを生成することができます。 これは現場を直接撮影しますので、たとえば建築当時から比べて、後からメンテナンス時に配管の位置が変わっているとか、そういったものにも対応しやすいですね。私たちも今、工場建屋の屋内をデータ化してARアプリケーションで使いたいといった要望をすごくたくさん寄せられています。

ARマーカーを使用せずに物体の形状を認識させる「Model Target 360」

今回のUnite Tokyo 2019ではどういった講演を予定されていますか?
山田

最近、新しいVuforia Engineを発表しました。PTCがCADベンダーであり、リアルベンダーであるシナジーの結実、といってもいいような機能が追加されます。物質にARで何かを表示するにはARマーカーが必要になりますよね。Vuforiaには、ARマーカーを使用せず、物体の形状を認識させるというテクノロジーを搭載しているのですが、これがCADから作られていれば、360°どの方向からでも「これは○○である」という風に認識する、「Model Target 360」という機能です。このあたりはしっかりとお話をする予定です。

講演のメインターゲットは、エンターテインメント業界の方々でしょうか。
山田

はい。Unite Tokyo 2019に関しましては、エンターテインメント業界の方々が多くいらっしゃると思っております。Vuforia全体として見るとやっぱりエンターテインメント業界の方々の占める割合が大きいですから、そこはきちんと対応していきたいと思っております。 そして、まさにARの産業利用が離陸しようとしているタイミングだと思うんですね。実際に、産業的な投資対効果が出たという報告も出始めてきていて。まさにそこが、開発者の方にとってはホワイトスペースなのではないかな、と。ですので、ご興味のある方はぜひ産業ARに足を踏み入れていただきたいなと思っております。

エンターテインメント業界の方が、産業ARの世界に興味を持ったらどのようにアプローチすればいいのでしょうか。
山田

とりあえずは、私どもにご相談いただくのが良いと思います。実は、いわゆる産業界のお客様も、自分たちの領域でARを使おうというのは、なかなかおっかなビックリというか……試しながら、ぶつかりながらやっていらっしゃるので、まずは足を踏み入れてみるというのが良いと思います。 いわゆるBtoBの世界でのARというのはかなり新しい商材なんですね。なので、伝統的にSIerさんのようなサービスを提供していらっしゃる方に、ARの技術を使いこなせる人たちが、まだまだ足りていない。ですから、求められているのは、まずは技術力だと思います。クライアント企業の業務理解はもちろんですが、それよりきちんとクライアントの要求を技術に落とすという技術力がまずは求められる。業務の詳しいところはクライアントが知っています。ARの技術自体は開発会社の方が熟知している、と。そこにどうしても隙間ができるのであれば、それは私たちが補いますので、まずは踏み込んでいただくのが良いのかなと思います。

Unite Tokyo 2019ではブースの出展もご予定されています。どういった方に向けたブースになるのでしょうか。
山田

ARに慣れ親しんでいる方も、そうでない方にも、ぜひ来ていただきたいですね。Model Target 360に関しては実機を見せるかまだ分かりませんが、ディズニーの着せ替えができるARや、イギリスで作っているキューブのARを展示する予定です。 Unityを通じてARを触っている方たちは、Vuforia Engineの新機能について既にご存知の方もいらっしゃるでしょうし。ARに興味がある、もしくは触り始めたばかりだという方には「こういったことができますよ」というサポートをできればと思っております。