XFLAG スタジオにおける資産の有効活用術 〜いかにして数万アセットを管理したか?〜

(写真左から) 下田淳、渡辺揮之

株式会社ミクシィ XFLAG ARTS/マネージャー・テクニカルアーティスト

下田 淳

映像業界でゲームムービーや遊技機映像制作など様々なプロジェクトに参加。コンシューマーゲーム開発会社、ソーシャルゲーム開発会社を経て、株式会社ミクシィに所属。現在はテクニカルアートグループのマネージャーとして、メンバーの育成・チーム強化に力を入れている。

オートデスク株式会社 技術営業本部/テクニカルスペシャリスト

渡辺 揮之

プリセールスエンジニアとして2008年末からオートデスクで勤務を開始。DCCツールの技術デモを担当しながら日本のユーザーのフィードバックをSoftimage、Maya、3ds Maxの開発チームへと伝えてきた。DCCツールを担当する他にも、2015年初頭からはプロジェクト管理ツールSHOTGUNを国内に普及すべく活動。

XFLAG スタジオにおける資産の有効活用術とは

今回のセッションは、XFLAG スタジオにおける資産の有効活用術、ということですが、この講演のキーになるサービスがオートデスクのSHOTGUN(ショットガン)ですね。

渡辺はい、とはいいましても、あまり弊社のサービスを前面に押し出すというよりは、多数のアセットを管理するにあたって困っていらっしゃる現場の方のヒントになれば、という意味で幅広いセッションになればいいなと考えています。「業務の効率化に問題があって、それをどう解決するか」みたいなアプローチですね。

セッションの受講対象の方はどのあたりの方を想定されていますか?

下田かなり幅広いと思いますね。ライブラリとして利用するというところで言いますと、現場にもメリットがありますし、プロデューサーから見ても業務の効率化というところでもメリットがありますので。

渡辺そうですね、それから、パイプラインを改善したい方にも興味は持っていただけると思います。単に、今、表計算ソフトでアセットの管理をしているような方、あるいはアーティストの方でも、情報をもっと効率よく管理したい、もっとクリエイティブな部分に時間を費やしたいと思っている人には参考になると思います。
ツールのカスタマイズ的なこと、テクニカルなことも触れられるので、パイプラインをカスタマイズしたいという方にも参考になると思います。

下田それから、Unityを用いた高品質なアニメーションの話について、Unityでどこまでクオリティの高い映像をつくれるかという技術検証をしておりましたので、その取り組みの紹介を少しさせていただこうかと思っています。あとは、弊社で開発しているスマホアプリ『ファイトリーグ』について触れたいなと思っています。こちらのタイトルをUnityで開発していますので、その開発工程で効率化した部分について、少しお話させてください。

業務効率化が必要になった開発現場とは

下田さんが「業務の効率化をしなければ」と思ったきっかけはどういったものでしたか?

下田モンストではアイテム類やキャラクターデータなど数万にも及ぶ素材があるのですが、その中から素材を探すのにけっこう時間がかかっていました。 どこに素材があって誰に聞いたらよいかわからない状況であったため、その都度Slackで全体に向けて聞いていました。 その時間が無駄だと思いアセットのライブラリ化の必要性を感じました。
それから、2015年頃に3Dのプロダクトの開発にジョインしましたが、当時は、職種ごとに皆バラバラのスプレッドシートで管理している状況でした。最新のデータがどこにあるのかわからないという状態になっていたり、管理コストも高くなっている状況でしたので、そのまま運用に入ってしまってはかなり効率が悪くなるんじゃないかと思って、一元管理するツールを探したというのが経緯です。

その段階で、スプレッドシートを使用されていた方はどの程度の人数が?

下田プロジェクト自体には60名くらいいましたね。それプラス外部のパートナー会社の方々がいたので、規模的には100名くらいの規模でずっと開発していました。
シートの更新は各自でやるというよりも、いろいろなシートを管理する人が一人ついていまして、この人が一日中ずっといろいろなシートを更新しているということをしておりました。

それは効率的ではないですね……。

下田そうですね。だんだん属人的になる状況になってしまいますので、その人が休んだら更新が止まってしまうとか、そういった影響もありました。それは非効率だということで、管理ツールに任せようという判断をしました。

渡辺結局、立場が違うと見たい情報というのも違いますしね。

下田そうですね、企画職、デザイナー職、それぞれ見たい情報が違いますので。

渡辺そこで別々に情報を管理してしまうと、更新の手間もでますし、整合性がとれなくなりますし。

下田二重管理というか、多重管理されている状況があまり良くないというところですね。
導入にあたっては、いろいろなツールを検討しました。モンストではSHOTGUNとは別のツールを使っていましたので、その話を聞いて、我々のプロジェクトにあうかどうかを考えました。
SHOTGUNには体験版がありましたので、1カ月、自由に使ってみて、どういったソフトウェアなのかというのを検証しまして、使えそうだな、効率化できるかもしれないという段階でさらに2カ月間、延長して、どんどんベースをつくり上げていったという感じです。
ツールに求めていたのは、いろいろなデータを入れられる要素があるかということ、そういった意味ではカスタマイズ性というところになるかなと思いますね。

進捗管理の効率化によって得られたもの

進捗の管理、作業効率の改善を実施した際に、結果として一番見られるところは全体の作業工数がどのくらい減るか、というところだと思いますが、いかがでしたでしょうか。

下田他のインタビューでもお話をしましたが、単純計算で150時間、これって1人月なんですね。朝から晩まで進捗シートを更新していた人の業務がSHOTGUNを導入したことで不要となったので、その分、浮いたという計算になります。ほんとに単純計算になるんですけど……。
そのほかにも、捜し物をしていた時間なども短縮されていますので、目に見えない部分でもずいぶんスピードがあがったんじゃないかと思います。ミクシィ「XFLAG スタジオ」の3Dアセット制作/進行管理。150時間も削減した、ゲーム開発に欠かせないツールとは

現場の方たちに対してどういった流れで導入を行われましたか?

下田やっぱり最初は、皆、ツールがどういったものか全然わからない状態ですので、そこら辺はデモを細かく実施して、扱い方を勉強していってもらいました。
一気にツールを導入した、というよりも、2週間くらいかけて徐々にスライドしていったという形ですね。

導入後に一番多かった声はどのようなものがありましたか?

下田「自分が抱えている業務がきちんと把握できるようになったのはすごく便利」という声が多く聞かれるようになりました。
一方で、「使い方が難しい」とか、そういった声もありました。
これについては、フィルター機能などを活用して必要な情報だけを表示するようにレイアウトを組んだりして、表示を軽くするという工夫をしていきました。

スプレッドシートからの移行はいつ頃に行われたのでしょうか。

下田2015年の半ば頃です。
タイトルローンチ予定の3ヶ月くらい前の、開発している最中でしたね。
このタイミングについては、いろいろ考えましたが、開発中でやってしまったほうがよい、運用に入ってから変えるとなったらもっと混乱すると思いましたので、それより前に、整備しておきたいと思いました。

今、振り返ってみても、そのジャッジは正しかった?

下田そうですね。移行が特に問題なくできましたので。移行もとてもスムーズでした。CSVを読み込んでデータを持っていけますので、そこら辺もSHOTGUNの良さの一つなのかな。

カスタマイズの方向性

SHOTGUNのカスタマイズについては、どのような指針で行われていますか?

渡辺カスタマイズが何を指すかによりますが、ユーザーインターフェースレベルではプロジェクトごとのリーダーができます。

下田弊社では煩雑になるのを防ぐため、カスタマイズはテクニカルアートグループだけがやる、としています。

テクニカルアートグループはどういったカスタマイズを施されているんでしょうか。

下田SHOTGUNにSHOTGUN APIというものがありますので、それを使って、MayaやフォトショップやUnityと連携するツールを開発しています。

そういったカスタマイズについては、渡辺さんがサポートされているのでしょうか。

渡辺最初のころは、APIの質問対応を行ってはいたんですけれども、もう、ご自身で作り込まれている感じがあります。

しっかりご自身でカスタマイズされているユーザーは、多いのでしょうか。

渡辺そうですね、SHOTGUN自体をデフォルトの標準機能で使われている方もいれば、ある程度の大きさになってくると自動化とかユーザーエラーの防止みたいなものをやるためにAPIを使われているケースもあります。ユーザーのやりたいことに応じて、UI上のカスタマイズで十分な人もいれば、APIまで手を出したい人もいるので、そういう意味ではユーザーのレベルに応じてカスタマイズの環境は整っていると。
状況によって、全然、使い方が異なるというのは、SHOTGUNを見ていると多いですね。「これしか使っていません」みたいな会社さんもありますし、深くまでやっていらっしゃる方もいますし、お客さんの使いたいところだけ、使いたいように使ってください、という感じです。

SHOTGUNの導入が終わって約2年、チームで当たり前のように使っているツールになってきていると思いますが、今後、どのように使っていきたいとお考えでしょうか。

下田今はライブラリとして活用している部分が多いんですが、今後はやはりSHOTGUNの持っている本来の機能、パイプラインの工程の進捗管理としても使用していきたいなと思っています。 それと、デザイナーがアセットを探す時間が長いのは非効率だと思います。 デザイナーはクリエイティブな時間を増やすというところに持っていって欲しいというのがありますので、いかにその時間をつくれるかというのがテクニカルアートグループの役割かなと思っています。

それでは、Unite Tokyo 2018にご来場される方へメッセージをお願いします。

下田スマートフォンのアプリ開発においてのSHOTGUNの幅広い活用に興味がある方にお越しいただきたいです。
それから、会社としてのメッセージになってしまいますが、ミクシィって、やっぱり、モンスターストライクのイメージが強くて、3Dで開発しているイメージってあまりないと思うんですね。ですので、今回の講演を通じて、弊社も3Dに力を入れているというのを知っていただく機会になればいいかなと思っています。

渡辺皆様の業務効率化にSHOTGUNがお役に立てることを望んでいます!