世界最大級のゲーム配信コミュニティ「Twitch」で拡張されるゲーム体験

Twitch/Lead Integration Success Engineer, Developer Experience Team

トラヴィス ブラウン

12歳でゲーム開発を自ら始めて以降、生涯の開発者。Twitch 入社以前は Amazon Web Service の Solustions Architect にてリードエンジニアを務める。当時の専門はセキュリティとゲーム開発。Twitch 入社以降はゲームデベロッパーと共に、より楽しく・よりインタラクティブなゲームの開発に携わる。

世界を席巻するゲーム動画配信サービス、Twitch

最初に、Twitchというサービスについて、ご説明をお願いします。

トラヴィスTwitchはでどんな方でもゲーム実況を発信できるライブビデオプラットフォームです。現在では雑談、クリエイティブ、ミュージックと、いろんなジャンルを取り扱うようになっているサービスです。
1年間でのユーザーの総滞在時間が3550億分。1年間で約700年分の時間、みなさまに滞在いただいています。もともとは2000年代、オンラインで「誰でも自分が発信できるサービス」として、Justin.tvというものがありました、これがTwitchの前身となるものです。Justin.tvを作ってからわかったのですが、みんなだいたいゲームを発信しているという傾向があったので、2011年にゲームにフォーカスをするためのサービス、Twitchを立ち上げました。そして、2014年にAmazonに980億ドルで100%取得されました。

Amazonの中に入ったことにより、Twitchはどんな風に変わりましたか?

トラヴィスそうですね、一番大きなところとしては、よりゲーム開発者の事を考えたサービスができるようになりました。それが、講演でも触れさせていただく「Drops」と「Extensions(拡張機能)」になります。

それでは、トラヴィスさんについてお伺いします。今、Twitchでどんなことをしているのでしょうか。

トラヴィス大学までは個人開発者としてゲームを開発していました。アメリカ東海岸に住んでいたのですが、そこにはゲーム会社というものがありませんでした。ですから、最初はゲーム開発ではなくつまんない開発の仕事につきました(笑)。
しかしAmazon Web Services, Inc.に入ったおかげでゲーム会社と一緒に開発できるようになって、そこから良い方向に転じてTwitchに行くことができました。 Developer Experience Teamという、ゲーム開発の中にエクスペリエンスを提供する仕事をしています。トラブルがあったから対処をするといったデベロッパーサポートというよりは、「こんな夢みたいなことできますよ!」といったアイディアを提供している感じですね。

Twitchの他にも、国内外ではさまざまな配信プラットフォームがあります。他の配信プラットフォームとの差をつけていくのでしょうか?

トラヴィスTwitchは他のサービスのことは気にしていません。Twitchはストリーマー、クリエイターに焦点をあてています。彼らが一番、いろんなことができて利益があるようにサービスを作っているんです。
例えば「パートナープログラム」。ストリーマーに対して、視聴者がサポートする仕組みをTwitchが用意しています。そして、Amazon プライムとの連携も始まりました。また、Twitch内の通貨「ビッツ」もAmazon経由で購入できるようになりました。
他にも、最近では半年ほど前からExtensions(拡張機能)が入ってきました。
これらは、個人のストリーマー、クリエイターはもちろん、どんな方でもサービスを利用できます。クリエイターがいろんなことができる最適な場所として整備しているのがTwitchのやりたいことなんです。

開発者は、なぜライブ配信について考えなければならないのか?

ゲーム開発者は何故Twitchのようなライブストリーミングサービスについて考える必要があるのでしょうか。

トラヴィスいい質問ですね。 まず、Twitchをはじめとしたライブストリーミングというのは、そのゲームにエンゲージするためのもっとも良いツールだと思っています。
Twitchが独自に調べて解明したこととしては、ゲーム配信をよく見る人ほど、そのゲームをよくプレイし、お金を使う傾向があるということもありますね。

新たなユーザーを獲得するため、さらにユーザーからの収益をよりよくするために、ライブストリーミングは大事である、ということですね。

トラヴィスはい。ストリーマーにとっても、Twitchはそのサービス自体にとても包容力があります。どんな人の配信でも受け入れてくれるウェルカムなコミュニティになっている、ということですね。ゲーム配信が広がっていくと同時に、Twitchのウェルカムな空気が一緒に広がっていってほしいと思っています。
最終的にはゲームをすることに対して、プレイヤーと視聴者の境界線を薄めていくことができればいいな、と思っています。

Unite Tokyo 2018で語られること

Unite Tokyo 2018ではどんなことを日本の開発者のみなさんにお話しする予定ですか?

トラヴィスTwitchのExtensions(拡張機能)について中心にお話するつもりです。これがTwitchの未来だと思っています。すでに一部のゲームで実装はされているのですが、ゲーム側とTwitchで連動することで、配信画面上にさまざまなオーバーレイ情報を表示させられる機能です。 esports用にExtensions(拡張機能)を開発する事例もありました。例えば、『Overwatch』では、大会用に拡張機能を作っていて、試合中の統計、スコアを出すようにしました。
『Destiny 2』では、ゲームプレイ中に配信者が取得したインゲームアイテムが視聴者に見えるようなExtensions(拡張機能)があります。

Twitchというプラットフォームはプレイヤーが操作するゲームを映すだけだったものでしたが、この取り組みはゲームの中に積極的にTwitchが入ろうとしているし、「ゲームを拡張するための窓」としてTwitchを使おうとしていますね。

トラヴィスはい。2014年に「Twitch Plays Pokemon」という、視聴者のチャット入力による多数決で初代「ポケットモンスター」を操作してストーリーを進めるという配信が行われました。
日本で初めてTwitchという名前がGoogle トレンドで話題になったのでご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
それは、「視聴者とゲーム配信がつながって何かができる」ということを実現した最初の瞬間で、そこからインスピレーションを受けて開発を続けています。

Twitchの配信プラットフォームは、自社サービスですべてを完結させようとせず、他サービスとの連携を含めた拡張性を持たせている印象を受けます。それは何か理由があるのでしょうか?

トラヴィス我々には「クリエイターファースト」という指針がります。そこにそって考えると、配信者だけではなくデベロッパーもTwitchのクリエイターである。そういう考えから、相互作用のできるサイトになっているんです。大きな会社のゲーム開発者でなくても、1人のエンジニアでもExtensions(拡張機能)を作って公開できるようになっています。
Uniteでは、まずTwitchの概要についてご紹介して、その後Extensions(拡張機能)を通じて見られる未来についてお話ができればと思っています。

その未来はどんなものなのでしょうか。

トラヴィス例えば、『Darwin Project』というバトルロワイヤルゲームでは、視聴者が配信者(プレイヤー)に対して、指示する行動を多数決で提案することができる、配信者のゲームに干渉することができるんです。
これはゲーム開発者的視点ではありますが、ライブストリーミングのインタラクティビティが上がっていくというのが、来たるべき未来だと思っています。

Unityを利用しているゲーム開発者に対して、どのような取り組みを行っていますか?

トラヴィスまもなく、Unityを対象に含めたTwitchのインゲームSDKが出る予定です。もちろん、現時点でもオンラインにつながっているゲーム……フロントエンドでやるのかサーバーサイドで処理するのか、違いはあるんですけれども……がTwitchと連携できるところを連携して、何かしらのインタラクションを持たせることは可能です。

今回のセッションはどんな人に来てもらいたいですか?

トラヴィスゲーム開発に関連する、ありとあらゆる人に来てほしいです。Twitchというのは独特な部分がありますので、プロデューサーからコミュニティーマネージャー、開発者まで、ライブストリーミングの概念を理解していないと正しい方向に行きにくいと思います。
なので、なるべく皆さんにいらしてもらって、考え方や出来ることを知っていってもらいたいです。

最後にUnite Tokyo 2018に来る方へのメッセージをお願いします。

トラヴィス私は日本へ行くのを楽しみにしております。
デベロッパーというグローバルコミュニティの一員として日本に行き、日本の開発者の皆さんがどんなアイディアを持っているのかを聞けるのを楽しみにしております。 誰でもウェルカムなので、ぜひいらして下さい。よろしくお願いします! Twitch